Yahoo!ニュース個人のオーサーの一人として、Yahoo!社向けの視察への参加依頼をいただき、実現した。何度も映像では見ているのだが、実際に眼前に福島第一原発1号機から4号機があるという状況になれば、何を感じるのか。それを知りたいというのが今回の福島第一原発視察にあたっての最大の動機だった。(記事中の写真はすべてYahoo!ニュース個人オーサー代表撮影)
1:今後に残るであろう強い思いを自分の中に視察中には感じなかった。
貴重な経験であったことは間違いないということを前提にではあるが、今後に残る強い思いは視察中にはなかった。防護服を身につけ半面マスクをつけ、線量計を装着した2時間。福島第一原発1号機から4号機を目の前に見て思うことはあった。
状況はどんどん改善はしているがまだ大変な状況に原発はある。そして、この場所が4年前のあの日以来幾度と無く映像で目にした場所であり、今もまだ廃炉に向けた作業が続けられている場所であると実感し、まだ制御されていない状態の燃料がその中にあることに対して、少し恐ろしい気にもなった。
日々300トンが流入を続ける汚染水対策についても色々と知った。汚染水の流入量を減らす陸側遮水壁と海への流出を防ぐ海側遮水壁の工事の現場、汚染水の浄化を進める高性能多核種除去設備、無数の汚染水タンクを見た。東電の方より丁寧な説明を受け、いくつか質問をさせていただいた。原発の現状や廃炉へ向けた取り組みについて多く知ることはできた。
でも、それだけである。現場を見て知識を得て貴重な体験をしたという事実が残るのみ。視察に行った自分ですら今後数十年続く廃炉作業の間関心を保てるかどうか確信を持てない。
2:増え続ける汚染水タンクの数は唯一目に見えるもの!?
原発の内部の状況はわからず、遮水壁も埋まってしまえば見ることができない。そんな原発の中で唯一目に見えて、原発の事故が収束していないことを知る事ができるものは汚染水タンクの数である。年度内に80万トンの保有水量を確保し最終的には100万トンまで増やすと計画されている。それまで林やグラウンド出会った場所を整地しタンクを設置している現状。視察中の話の中ででた、「もし、福島第一原発のように平地ではなく、女川原発のように山間部にあったら汚染水の貯蔵は相当困難だろう」という東電職員の発言。しかし、計画によれば今年の11月に100万トンまで増やし、そこが上限のようだ。となると、良いことではあるがタンクの数が目に見えて増えていく状況もあと数ヶ月のみ。3:わからなく、関係がなさそうなものへ関心を持つことの難しさ。
歴史上に残るとてつもない事故がおきたこと。自分の住んでいた場所に帰ることができない人や大変な思いをしている農業・漁業関係者がいること。30年から40年後まで廃炉作業は続くことは重要な事である。しかし、専門的な話はわからないし、そもそも原発が廃炉に向かっていっていることは一部の人を除きほとんどの人の日常にとって関係がない話である。'震災前に原発に関心を持っている人などほとんどいなかったことと近いかもしれない。しかし、事故を契機にエネルギー政策、電力会社のあり方、“安心”とは何かなど多くの議論が巻き起こったこともこのままだと一緒に忘れ去られていっても良いのだろうか。